「乗法公式は覚えたのに、平方根が入ると急に手が止まる」——そんな経験はないだろうか。
実は、平方根を含む式の展開でつまずく人の多くは、公式の使い方自体は問題ない。「$\sqrt{3}$ を文字 $a$ のように扱ってよい」という発想の切り替えができていないだけである。
この記事では、乗法公式を平方根に適用する方法を、具体例とアニメーションで順を追って解説する。読み終える頃には、$(\sqrt{2} + 3)^2$ のような式も迷わず展開できるようになる。
そもそも乗法公式とは?
まず、乗法公式を確認しておこう。中学で学ぶ主な乗法公式は次の4つである。
乗法公式とは、式の展開を効率よく行うための「型」である。毎回分配法則で計算するより、公式に当てはめる方が圧倒的に速い。
これらの公式は、$a$ や $b$ にどんな数を入れても成り立つ。つまり、$\sqrt{2}$ や $\sqrt{5}$ のような平方根を入れても、まったく同じように使える。
ここが最大のポイントである。
$\sqrt{3}$ を「一つの文字」として扱えばよい。
平方根を含む展開を図で理解する
$(a + b)^2 = a^2 + 2ab + b^2$ という公式は、面積図で考えると視覚的に理解できる。
下のアニメーションでは、$(\sqrt{5} + 2)^2$ を面積図で表している。「$\sqrt{5}$」と「$2$」の長さを持つ正方形を考え、その面積を4つの部分に分けて計算する様子を確認しよう。
面積図から、次のことがわかる。
面積図の考え方:$(a + b)^2$ は「一辺が $a + b$ の正方形の面積」と同じ。これを4つの長方形に分けると、$a^2$、$ab$、$ab$、$b^2$ の4つになる。
和の平方公式 $(a + b)^2$ の使い方
公式 $(a + b)^2 = a^2 + 2ab + b^2$ を平方根に適用する手順を確認しよう。
例題1:$(\sqrt{3} + 5)^2$ を展開せよ
$a = \sqrt{3}$、$b = 5$ として公式に当てはめる。
$(\sqrt{3})^2 = 3$ である。「$\sqrt{ }$ を2乗すると中身だけが残る」と覚えておこう。
例題2:$(2\sqrt{2} + 3)^2$ を展開せよ
$a = 2\sqrt{2}$、$b = 3$ として公式に当てはめる。
$(2\sqrt{2})^2$ の計算に注意。$2^2 \times (\sqrt{2})^2 = 4 \times 2 = 8$ である。係数も2乗することを忘れない。
差の平方公式 $(a – b)^2$ の使い方
公式 $(a – b)^2 = a^2 – 2ab + b^2$ も同様に使える。違いは「$-2ab$」の部分だけである。
例題3:$(\sqrt{7} – 2)^2$ を展開せよ
$a = \sqrt{7}$、$b = 2$ として公式に当てはめる。
例題4:$(3 – \sqrt{5})^2$ を展開せよ
平方根が後ろにある場合も同じ。$a = 3$、$b = \sqrt{5}$ として公式に当てはめる。
和と差の積公式 $(a + b)(a – b)$ の使い方
公式 $(a + b)(a – b) = a^2 – b^2$ は、平方根の計算で特に威力を発揮する。
なぜなら、結果から平方根が消えることが多いからである。
例題5:$(\sqrt{5} + 2)(\sqrt{5} – 2)$ を計算せよ
$a = \sqrt{5}$、$b = 2$ として公式に当てはめる。
和と差の積公式を使うと、$(\sqrt{n} + m)(\sqrt{n} – m) = n – m^2$ のように平方根が消える。この性質は分母の有理化で重要になる。
例題6:$(3\sqrt{2} + 4)(3\sqrt{2} – 4)$ を計算せよ
$a = 3\sqrt{2}$、$b = 4$ として公式に当てはめる。
$(x + a)(x + b)$ 型の公式の使い方
公式 $(x + a)(x + b) = x^2 + (a + b)x + ab$ も平方根に適用できる。
例題7:$(\sqrt{3} + 2)(\sqrt{3} + 5)$ を計算せよ
$x = \sqrt{3}$、$a = 2$、$b = 5$ として公式に当てはめる。
例題8:$(\sqrt{6} – 1)(\sqrt{6} + 4)$ を計算せよ
$x = \sqrt{6}$、$a = -1$、$b = 4$ として公式に当てはめる。
よくある間違いと対策
❌ $(\sqrt{3})^2 = \sqrt{9} = 3$ と遠回りする
✅ $(\sqrt{3})^2 = 3$ と直接答える
対策:「$\sqrt{ }$ の2乗は中身がそのまま出る」と覚える
❌ $(2\sqrt{3})^2 = 2 \times 3 = 6$
✅ $(2\sqrt{3})^2 = 2^2 \times (\sqrt{3})^2 = 4 \times 3 = 12$
対策:「まるごと2乗」を意識する
❌ $3 + 10\sqrt{3} + 25$ で終わる
✅ $28 + 10\sqrt{3}$ まで計算する
対策:「整数どうしをまとめる」を最終確認にする
公式選択チャート
どの公式を使えばよいか迷ったときは、次のチャートで判断しよう。
この単元のよくある質問
Q. なぜ平方根を文字と同じように扱ってよいのですか?
A. 乗法公式は「どんな数を代入しても成り立つ」という性質を持っている。$\sqrt{2}$ も $\sqrt{3}$ も、特定の値を持つ「数」なので、文字 $a$ や $b$ の代わりに入れてまったく問題ない。公式の本質は「式の構造」にあり、中身が整数でも平方根でも関係ないのである。
Q. $(2\sqrt{3})^2$ を計算するとき、なぜ $2^2 \times (\sqrt{3})^2$ になるのですか?
A. $(ab)^2 = a^2 \times b^2$ という累乗の法則による。$2\sqrt{3}$ は「$2 \times \sqrt{3}$」という掛け算の形なので、2乗すると「$2^2 \times (\sqrt{3})^2$」になる。つまり、掛け算の各部分をそれぞれ2乗すればよい。
Q. 展開した結果で、√の項と整数の項の順番はどちらが先でもよいですか?
A. 数学的にはどちらでも正しい。$28 + 10\sqrt{3}$ でも $10\sqrt{3} + 28$ でも同じ値である。ただし、一般的には「整数(有理数)を先、√を含む項(無理数)を後」と書くことが多い。テストでは学校の指示に従おう。
練習問題
まとめ
この記事では、平方根を含む式の展開について学んだ。ポイントは以下の通りである。
- 平方根 $\sqrt{n}$ は「一つの文字」として扱い、乗法公式にそのまま当てはめる
- $(\sqrt{n})^2 = n$ を利用して、2乗の項を計算する
- $(2\sqrt{3})^2 = 4 \times 3 = 12$ のように、係数も忘れずに2乗する
- $(a + b)(a – b) = a^2 – b^2$ を使うと、平方根が消えて整数になることがある
公式を使いこなすコツは、式の「形」に注目することである。$\sqrt{ }$ が入っていても、構造さえ見抜ければ、整数のときと同じように計算できる。
Core-dorill— 基礎を、何度でも。

コメント