「二次方程式の解き方は覚えたのに、係数が分数や小数になった途端、手が止まる」という経験はないだろうか。
公式に当てはめようとしても、計算が複雑になりすぎてミスが続く。途中で何をしているのかわからなくなる。そんな悩みを抱えている人は多い。
実は、分数や小数の係数を持つ二次方程式には、最初に「整数係数に直す」という一手間を加えるだけで、いつもの解き方がそのまま使える。この記事では、その変形テクニックを順を追って解説する。
そもそも「整数係数に直す」とは?
二次方程式 $ax^2 + bx + c = 0$ を解くとき、係数 $a, b, c$ が整数であれば計算しやすい。しかし、係数が分数や小数の場合、そのまま解の公式に代入すると計算が煩雑になる。
係数とは、$x^2$ や $x$ の前についている数のことである。例えば $3x^2 – 2x + 5 = 0$ では、$x^2$ の係数が $3$、$x$ の係数が $-2$、定数項が $5$ である。
「整数係数に直す」とは、方程式の両辺に同じ数をかけて、すべての係数を整数にする操作のことである。
具体例を見てみよう。
この方程式の両辺に $8$ をかけると:
係数がすべて整数になった。これなら普段どおりの方法で解ける。
変形のしくみを図で理解する
なぜ両辺に同じ数をかけても方程式の解は変わらないのか。これを視覚的に確認しよう。
天秤のように、左辺と右辺が等しい状態(つり合い)があるとき、両方に同じ操作をすれば、つり合いは崩れない。これが「両辺に同じ数をかけても解は変わらない」理由である。
分数係数の二次方程式を解く手順
分数係数の二次方程式を解くには、次の手順で進める。
方程式に登場するすべての分数の分母を確認し、その最小公倍数を求める。
方程式の両辺に最小公倍数をかけて、分数を消す。
因数分解、平方完成、または解の公式を使って解く。
例題1:分数係数の二次方程式
次の方程式を解いてみよう。
ステップ1:分母の最小公倍数を見つける
分母は $2$ と $4$ である。最小公倍数は $4$。
ステップ2:両辺に $4$ をかける
$4 \times \frac{1}{2} = \frac{4}{2} = 2$、$4 \times \frac{3}{4} = \frac{12}{4} = 3$ と計算する。
ステップ3:解の公式で解く
$a = 2$、$b = -3$、$c = -4$ を解の公式に代入する。
答え:$x = \dfrac{3 + \sqrt{41}}{4}, \dfrac{3 – \sqrt{41}}{4}$
小数係数の二次方程式を解く手順
小数係数の場合も考え方は同じである。小数を整数に直すために、$10$、$100$ などをかける。
最も桁数が多い小数を見つける。
小数点以下1桁なら $10$、2桁なら $100$ をかける。
因数分解、平方完成、または解の公式を使って解く。
例題2:小数係数の二次方程式
次の方程式を解いてみよう。
ステップ1:小数点以下の桁数を確認
すべて小数点以下1桁なので、$10$ をかければよい。
ステップ2:両辺に $10$ をかける
ステップ3:因数分解で解く
$2x^2 – 5x – 3$ を因数分解する。
$a \times c = 2 \times (-3) = -6$ となる2数で、和が $b = -5$ になる組み合わせを探す。$-6$ と $1$ で $-6 + 1 = -5$。
したがって:
答え:$x = -\dfrac{1}{2}, 3$
変形の流れをアニメーションで確認
分数係数の方程式を整数係数に変形する過程をアニメーションで見てみよう。
よくある間違いと対策
分数・小数係数の二次方程式でよくある間違いを確認しておこう。
| 間違いの例 | なぜダメなのか | 正しい方法 |
|---|---|---|
| 両辺ではなく一部だけにかける | 等式の関係が崩れる | すべての項に同じ数をかける |
| 分母の1つだけをかける | 他の分数が残る | 最小公倍数をかける |
| 小数のまま解の公式に代入 | 計算ミスが起きやすい | 先に整数係数に直す |
特に多いミスは「右辺の $0$ にかけ忘れる」ことである。$0$ に何をかけても $0$ だが、式を書くときは意識して両辺すべてにかけよう。
この単元のよくある質問
Q. 分母の最小公倍数がわからないときはどうすればいい?
A. 分母をすべてかけ合わせた数を使っても問題ない。例えば分母が 2, 3, 5 なら、最小公倍数は 30 だが、2 × 3 × 5 = 30 でも同じ結果になる。最小公倍数を使う方が係数が小さくなり計算しやすいが、正しい答えは出せる。
Q. 変形した後の方程式を解くとき、答えは分数でもいいの?
A. もちろん分数で答えてよい。整数係数に直すのは「計算しやすくするため」であり、解が分数になることは普通にある。例題2の答え $x = -\dfrac{1}{2}$ のように、きれいな分数で表そう。
Q. 小数を分数に直してから解く方法はある?
A. ある。例えば $0.2 = \dfrac{1}{5}$、$0.5 = \dfrac{1}{2}$ のように直せば、分数係数の方程式として解ける。どちらの方法でも正しい答えが出るので、自分がやりやすい方を選ぼう。
練習問題
まとめ
この記事では、係数が分数や小数の二次方程式の解き方を学んだ。ポイントは以下の通りである。
- 分数係数の場合:分母の最小公倍数を両辺にかける
- 小数係数の場合:$10$ や $100$ を両辺にかける
- 整数係数に直してから、いつもの方法(因数分解・解の公式)で解く
- 両辺のすべての項に同じ数をかけることが大切
複雑そうに見える方程式も、最初の一手間で見慣れた形になる。繰り返し練習して、変形の感覚を身につけよう。
Core-dorill— 基礎を、何度でも。

コメント