「因数分解の公式を覚えたはずなのに、なぜか使いこなせない」——そんな経験はないだろうか。
特に $x^2 + 2ax + a^2$ や $x^2 – 2ax + a^2$ の形は、公式を知っていても「どれに当てはまるのかわからない」と迷う人が多い。途中式で何をしているのか見えず、暗記に頼ってしまうのが原因である。
実は、この公式は「展開の逆」という視点で捉えれば、丸暗記しなくても自然に使えるようになる。この記事では、図解とアニメーションで公式の仕組みを可視化し、迷わず使えるようになるまで順を追って解説する。
そもそも「完全平方式」とは?
今回学ぶ因数分解の公式は、「完全平方式」と呼ばれる特別な形をした式に使うものである。
完全平方式とは、「同じカッコの2乗」に変形できる式のことである。例えば $(x+3)^2$ を展開すると $x^2 + 6x + 9$ になるが、この $x^2 + 6x + 9$ のような式を完全平方式と呼ぶ。
具体的に見てみよう。$(x+3)^2$ を展開すると:
因数分解とは、この展開の「逆」をすることである。つまり:
このように、展開された式を元のカッコの形に戻すのが因数分解である。
公式を確認しよう
完全平方式の因数分解には、2つの公式がある。
係数とは、文字の前についている数のことである。例えば $6x$ の係数は $6$ である。
この公式のポイントは3つある。
最初の項は $x^2$:$x$ の2乗である。
最後の項は $a^2$:何かの2乗になっている。
真ん中の項は $2ax$:「$a$ の2倍」と $x$ の積である。
特に「真ん中の項が $a$ の2倍になっているか」が、この公式を使えるかどうかの決め手となる。
公式の仕組みを図で理解する
なぜ $x^2 + 2ax + a^2 = (x+a)^2$ となるのか、面積図で確認しよう。
$(x+a)^2$ は「一辺が $(x+a)$ の正方形の面積」と考えることができる。この正方形を分解すると、4つの部分に分かれる。
アニメーションで確認できるように、正方形の面積を4つに分けると:
- 左上:$x \times x = x^2$
- 右上:$a \times x = ax$
- 左下:$x \times a = ax$
- 右下:$a \times a = a^2$
これらを合計すると $x^2 + ax + ax + a^2 = x^2 + 2ax + a^2$ となる。だから真ん中の項の係数が「$a$ の2倍」になるのである。
公式を使うかどうかの見分け方
与えられた式がこの公式で因数分解できるかどうか、見分ける手順を確認しよう。
ポイントは「最後の項の平方根を取り出して、その2倍が真ん中の係数になっているか」を確認することである。
例題で手順を確認しよう
例題1:$x^2 + 6x + 9$ を因数分解せよ
最初と最後の項を確認する。
$x^2$ は $x$ の2乗、$9$ は $3$ の2乗($3^2 = 9$)である。
最後の項 $9$ の平方根を求める。
$\sqrt{9} = 3$ なので、$a = 3$ である。
真ん中の項が「$a$ の2倍 $\times x$」になっているか確認する。
$2 \times 3 = 6$ で、真ん中の項は $6x$。一致している!
公式 $x^2 + 2ax + a^2 = (x+a)^2$ を適用する。
$a = 3$ を代入して、$(x+3)^2$ となる。
例題2:$x^2 – 10x + 25$ を因数分解せよ
最初と最後の項を確認する。
$x^2$ は $x$ の2乗、$25$ は $5$ の2乗($5^2 = 25$)である。
最後の項 $25$ の平方根を求める。
$\sqrt{25} = 5$ なので、$a = 5$ である。
真ん中の項が「$a$ の2倍 $\times x$」になっているか確認する。
$2 \times 5 = 10$ で、真ん中の項は $-10x$。係数の絶対値が一致!
真ん中の項の符号がマイナスなので、$x^2 – 2ax + a^2 = (x-a)^2$ の公式を使う。
公式 $x^2 – 2ax + a^2 = (x-a)^2$ を適用する。
$a = 5$ を代入して、$(x-5)^2$ となる。
例題3:$x^2 + 8x + 16$ を因数分解せよ
手順通りに解いてみよう。
よくある間違いと対策
真ん中の項の確認を忘れる
$x^2 + 5x + 9$ を見て「$9 = 3^2$ だから $(x+3)^2$」と早とちりする。
→ 真ん中の項は $5x$ だが、$2 \times 3 = 6$ なので一致しない。この式は完全平方式ではない。
符号の判断ミス
真ん中の項がプラスなら $(x+a)^2$、マイナスなら $(x-a)^2$ である。
→ 「真ん中の符号 = カッコの中の符号」と覚えよう。
展開して確認しない
自信がないときは、答えを展開して元の式に戻るか確認しよう。
例:$(x+3)^2 = x^2 + 6x + 9$ ✓
公式を使えるかの判定練習
以下の式が完全平方式かどうか、判定してみよう。
$x^2 + 6x + 8$ のように、最後の項が完全平方数でない場合や、2倍の値が一致しない場合は、この公式は使えない。別の因数分解の方法(たすきがけなど)を使う必要がある。
この単元のよくある質問
Q. 真ん中の項が「2倍」になる理由は?
A. $(x+a)^2 = (x+a)(x+a)$ を展開すると、$x \times a$ と $a \times x$ の2つの $ax$ が出てくるからである。面積図で見ると、$ax$ の長方形が2つあることがわかる。
Q. 係数が分数や小数のときも公式は使える?
A. 使える。例えば $x^2 + 3x + \dfrac{9}{4}$ は $\left(x + \dfrac{3}{2}\right)^2$ となる。$\sqrt{\dfrac{9}{4}} = \dfrac{3}{2}$ で、$2 \times \dfrac{3}{2} = 3$ と確認できる。
Q. $4x^2 + 12x + 9$ のように $x^2$ の係数が1でないときは?
A. この場合は $4x^2 = (2x)^2$ と見て、$x$ の代わりに $2x$ を使う。$9 = 3^2$ で、$2 \times 2x \times 3 = 12x$ なので、$(2x + 3)^2$ となる。
練習問題
まとめ
この記事では、完全平方式の因数分解公式について学んだ。ポイントは以下の通りである。
- $x^2 + 2ax + a^2 = (x+a)^2$、$x^2 – 2ax + a^2 = (x-a)^2$
- 最後の項の平方根を求め、その2倍が真ん中の係数になっているか確認する
- 真ん中の項の符号で、カッコの中の符号が決まる
- 迷ったら展開して確かめる
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