因数分解の応用と複雑な式の因数分解
「基本的な因数分解はできるのに、複雑な式になると手が止まる」——そんな経験はないだろうか。
式が長くなったり、文字が2種類以上あったりすると、どこから手をつければいいのかわからなくなる。公式を知っていても使いどころが見えない、という悩みは非常に多い。
実は、複雑に見える式も「ある工夫」をすれば、基本の公式だけで解ける形に変わる。この記事では、その工夫——置き換えのテクニックを中心に、応用的な因数分解を順を追って解説する。
因数分解の応用とは?
中学3年で学ぶ基本的な因数分解の公式は、次の4つである。
因数分解とは、多項式を「かけ算の形」に変形することである。展開の逆の操作と考えるとわかりやすい。
応用問題では、これらの公式が「そのままの形」では使えない。しかし、式を変形したり、一部を別の文字に置き換えたりすることで、公式が使える形に持っていける。
具体的には、次のような場面で応用力が求められる。
- かっこを含む式
- 同じかたまりが繰り返し現れる式
- 文字が複数ある式
- 次数が4以上の式
置き換えのテクニックを図で理解する
複雑な式を因数分解するとき、最も強力な武器が「置き換え」である。式の中に同じかたまりが見えたら、それを1つの文字で置き換える。すると、見慣れた公式の形が現れる。
上の図のように、$(x+1)$ という同じかたまりが2回現れている。これを $A$ と置くと、$A^2 + 5A + 6$ という見慣れた形になる。公式②を使えば $(A+2)(A+3)$ と因数分解でき、最後に $A$ を元に戻せばよい。
パターン別:応用因数分解の手順
パターン1:共通部分を置き換える
式の中に同じかたまりが繰り返し現れるとき、そのかたまりを1つの文字で置き換える。
例題1. $(x+2)^2 – 7(x+2) + 12$ を因数分解せよ。
共通部分を見つけて置き換える。
$(x+2)$ が2回現れているので、$A = x + 2$ と置く。
公式②を使って因数分解する。
かけて $12$、たして $-7$ になる2数は $-3$ と $-4$ である。
$A$ を元に戻す。
置き換えた後は、必ず「元に戻す」ステップを忘れないこと。戻し忘れは減点対象である。
パターン2:平方の差の形を作る
$a^2 – b^2 = (a+b)(a-b)$ の公式は、$a$ や $b$ がかっこ式でも使える。
例題2. $(x+3)^2 – (x-1)^2$ を因数分解せよ。
$a^2 – b^2$ の形であることを確認する。
$a = x + 3$、$b = x – 1$ と見なせる。
公式④ $a^2 – b^2 = (a+b)(a-b)$ を適用する。
かっこの中を計算する。
最終的な答えを書く。
または、$(2x+2) \cdot 4$ をそのまま因数分解して
パターン3:4次式を2次式として扱う
$x^4$ を含む式は、$x^2 = A$ と置くと2次式になる。
例題3. $x^4 – 5x^2 + 4$ を因数分解せよ。
$x^2 = A$ と置き換える。
公式②で因数分解する。
かけて $4$、たして $-5$ になる2数は $-1$ と $-4$ である。
$A$ を元に戻す。
さらに因数分解できる形がないか確認する。
$x^2 – 1$ と $x^2 – 4$ はどちらも $a^2 – b^2$ の形である。
最終的な答えを書く。
因数分解は「これ以上因数分解できない」ところまで行うのが原則である。途中で止めると減点されることがある。
複雑な式の因数分解:視覚的に理解する
置き換えがどのように式を単純化するか、具体的な変化をアニメーションで確認しよう。
置き換えが必要な式の見分け方
どんなときに置き換えを使えばよいか、判断のポイントを整理しておこう。
| 式の特徴 | 置き換え方 | 例 |
|---|---|---|
| 同じかっこが繰り返す | かっこを $A$ に | $(x+1)^2 + 3(x+1)$ |
| $x^4$ と $x^2$ だけ | $x^2 = A$ | $x^4 – 10x^2 + 9$ |
| $x^6$ と $x^3$ だけ | $x^3 = A$ | $x^6 + 7x^3 – 8$ |
| 同じ式が2乗されている | $a^2 – b^2$ を適用 | $(2x+1)^2 – 9$ |
置き換えを使うかどうか迷ったら、「同じ形が2回以上あるか」をまず確認しよう。
よくある間違いと対策
置き換えた文字を元に戻し忘れる
$A = x + 1$ と置いたまま答えを $(A-2)(A+3)$ と書いてしまう。
対策:答えを書く前に「$A$ や $B$ が残っていないか」を必ず確認する。
因数分解を途中で止める
$(x^2 – 4)(x^2 – 9)$ で終わりにしてしまう。
対策:因数分解した後も「さらに分解できる式がないか」を確認する。特に $a^2 – b^2$ の形は見逃しやすい。
かっこを外すとき符号を間違える
$(x+2) – 3$ を計算するとき、$x + 2 – 3 = x – 1$ を $x + 5$ などと誤る。
対策:かっこの前の符号に注意し、一度展開してから計算する。
この単元のよくある質問
Q. 置き換える文字は何でもいいですか?
A. 基本的には $A$ や $B$ など、問題に登場していない文字を使う。$x$ や $y$ がすでに使われているなら、それ以外の文字を選ぶ。何を置き換えたかを「$A = x + 1$ とおく」のように必ず書くこと。
Q. いつ「これ以上因数分解できない」と判断しますか?
A. 各因数が「$ax + b$(1次式)」または「公式が使えない2次式」になったら完成である。例えば $(x+1)$ や $(x^2 + 1)$(実数の範囲では分解不可)はそれ以上分解できない。
Q. 置き換えを使わずに解くことはできますか?
A. できる場合もあるが、式が複雑なほど計算ミスが増える。置き換えは「ミスを減らすための道具」と考えて積極的に使おう。慣れれば置き換えの方が速く解ける。
練習問題
まとめ
この記事では、因数分解の応用テクニックについて学んだ。ポイントは以下の通りである。
- 同じかたまりが繰り返し現れたら、それを1文字に置き換える
- $x^4$ を含む式は $x^2 = A$ と置くと2次式になる
- $(かっこ)^2 – (かっこ)^2$ の形は $a^2 – b^2$ の公式で処理する
- 因数分解は「これ以上分解できない」ところまで行う
- 置き換えた後は、必ず元の文字に戻す
置き換えは、複雑な式を「見慣れた形」に変える強力な道具である。最初は面倒に感じるかもしれないが、慣れれば計算ミスが減り、むしろ速く解けるようになる。繰り返し練習して、自然に使えるようにしよう。
Core-dorill— 基礎を、何度でも。

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