「展開の公式は覚えた。でも、複雑な式になると手が止まる」——そんな経験はないだろうか。
式が長くなると、どこから手をつければいいかわからない。公式を使おうにも、形が違う気がして自信が持てない。結局、時間だけが過ぎていく。
実は、複雑に見える式も「置き換え」という工夫ひとつで、見慣れた形に変わる。この記事では、展開の応用テクニックを3つのパターンに整理し、どんな式でも迷わず展開できる力を身につける。
展開の応用とは?
展開の基本公式を復習しよう。
これらの公式は「$a$や$b$が単純な数や文字」のときは使いやすい。しかし、次のような式ではどうだろうか。
「展開の応用」とは、複雑な式を置き換えや分解によって公式が使える形に変形する技術のことである。
応用のポイントは「公式の形を見抜く目」と「置き換えの発想」の2つである。
パターン1:係数付きの展開
まず、$a$や$b$の部分に「係数付きの項」が入るパターンから見ていこう。
例題1:$(2x + 3y)^2$ を展開せよ
この式を $(a + b)^2 = a^2 + 2ab + b^2$ の形と見比べる。
$a = 2x$、$b = 3y$ と考えれば、公式がそのまま使える。
公式 $(a + b)^2 = a^2 + 2ab + b^2$ に当てはめる。
各項を計算する。
結果をまとめる。
よくある間違い:$(2x)^2 = 2x^2$ としてしまうミス。正しくは $(2x)^2 = 2^2 \times x^2 = 4x^2$ である。係数も2乗することを忘れないようにしよう。
例題2:$(3a – 2b)^2$ を展開せよ
公式 $(a – b)^2 = a^2 – 2ab + b^2$ を使う。
各項を計算する。
結果をまとめる。
パターン2:置き換えを使う展開
式が3つ以上の項を含むとき、「置き換え」が威力を発揮する。
例題3:$(x + y + z)(x + y – z)$ を展開せよ
一見複雑だが、$x + y$ をひとまとめにすると見通しが良くなる。
$x + y = A$ と置き換える。
$(A + z)(A – z) = A^2 – z^2$ を使う。
$A = x + y$ を戻す。
$(x + y)^2$ を展開する。
置き換えのコツ:2つのカッコで「共通している部分」を探す。$(x + y + z)$ と $(x + y – z)$ では、$x + y$ が共通なので、これを $A$ と置く。
例題4:$(a + b – 3)(a + b + 5)$ を展開せよ
$a + b = M$ と置き換える。
$(x + a)(x + b) = x^2 + (a + b)x + ab$ の形を使う。
$M = a + b$ を戻す。
$(a + b)^2$ を展開して整理する。
置き換えの流れを図で理解する
置き換えのプロセスをアニメーションで確認しよう。
このように、置き換えは「複雑な式を一度シンプルにして、公式を使った後で戻す」という流れである。
パターン3:工夫が必要な展開
公式がそのまま当てはまらない場合でも、式を分解すれば対応できる。
例題5:$(x + 2)^2 – (x – 3)^2$ を計算せよ
これは「展開してから引く」方法と「因数分解の公式を使う」方法がある。ここでは因数分解の公式を使う方法を紹介する。
$A^2 – B^2 = (A + B)(A – B)$ の形と見れば、展開せずに計算できる。
$A = x + 2$、$B = x – 3$ と考える。
$A + B$ と $A – B$ を計算する。
結果をまとめる。
「展開してから計算」より「公式で一気に計算」の方が速く、ミスも少ない。どちらの方法も使えるようにしておこう。
例題6:$(x + 1)(x + 2)(x + 3)(x + 4)$ を展開せよ
4つの因数をそのまま展開すると大変である。工夫が必要だ。
工夫:$(x + 1)(x + 4)$ と $(x + 2)(x + 3)$ をペアにすると、展開後の「$x$の係数の和」が等しくなる。
ペアを作る:$(x + 1)(x + 4)$ と $(x + 2)(x + 3)$
$x^2 + 5x = M$ と置き換える。
$(M + 4)(M + 6)$ を展開する。
$M = x^2 + 5x$ を戻す。
ペアの作り方を図で理解する
$(x + 1)(x + 2)(x + 3)(x + 4)$ のペアリングをビジュアルで確認しよう。
ペアの作り方のポイント:$x$の係数の和が同じになるペアを探す。$(x+1)(x+4)$と$(x+2)(x+3)$はどちらも係数の和が5になる。
よくある間違いと対策
| よくある間違い | 正しい考え方 |
|---|---|
| $(2x)^2 = 2x^2$ としてしまう | $(2x)^2 = 4x^2$(係数も2乗する) |
| 置き換え後、元に戻すのを忘れる | $A$ で計算したら必ず $A = ○○$ を代入する |
| $(a + b)^2 = a^2 + b^2$ としてしまう | $(a + b)^2 = a^2 + 2ab + b^2$(中央の項を忘れない) |
この単元のよくある質問
Q. 置き換えはいつ使えばいいですか?
A. 2つのカッコに「共通する部分」があるときに使う。例えば $(x + y + 3)(x + y – 5)$ なら $x + y$ が共通なので、$A = x + y$ と置き換える。共通部分がない場合は、そのまま公式を使うか、分配法則で展開する。
Q. 4つの因数をペアにするとき、どのペアを選べばいいですか?
A. 展開後の「$x$の係数の和」が同じになるペアを選ぶ。$(x+1)(x+4)$ と $(x+2)(x+3)$ では、どちらも $1+4=5$、$2+3=5$ で等しい。これにより、$x^2 + 5x$ という共通部分が生まれ、置き換えが使える。
Q. 置き換えなしでも解けますか?
A. 解けるが、計算量が増えてミスしやすくなる。例えば $(x+1)(x+2)(x+3)(x+4)$ を置き換えなしで展開すると、途中で $x^3$ の項などを何度も計算する必要がある。置き換えを使えば、より短い計算で済む。
練習問題
まとめ
この記事では、展開の応用テクニックについて学んだ。ポイントは以下の通りである。
- 係数付きの展開:$(2x)^2 = 4x^2$ のように、係数も忘れずに計算する
- 置き換え:共通部分を $A$ などの文字に置き換えて、公式が使える形にする
- ペアリング:4つの因数は「係数の和が等しいペア」を作ると計算しやすい
- $A^2 – B^2$ の活用:2乗の差は因数分解の公式で一気に計算できる
複雑に見える式も、「公式の形を見抜く目」と「置き換えの発想」があれば、必ず解ける。
Core-dorill— 基礎を、何度でも。

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