$(x+3)(x+5)$ を展開しようとして、「えーと、$x^2$ と……あれ、後ろの数字どうなるんだっけ?」と手が止まった経験はないだろうか。
展開の公式を暗記したはずなのに、いざ問題を解こうとすると「足すんだっけ?掛けるんだっけ?」と混乱してしまう。似たような形の公式がいくつもあって、どれを使えばいいかわからなくなる——これは多くの人が経験する「あるある」である。
実は、混乱の原因は「公式の意味」を理解せずに丸暗記しようとしているからである。この記事では、$(x+a)(x+b)$ の展開公式を「なぜそうなるのか」から順を追って解説する。図解とアニメーションで仕組みを理解すれば、公式を忘れても自分で導き出せるようになる。
そもそも $(x+a)(x+b)$ の展開とは?
まず「展開」という言葉の意味を確認しよう。
展開とは、カッコを外して1つの式にまとめることである。逆に、1つの式をカッコを使った形に戻すことを「因数分解」という。
$(x+a)(x+b)$ という形は、「$x$ に $a$ を足したもの」と「$x$ に $b$ を足したもの」を掛け算している。これを展開すると、次の公式が成り立つ。
具体的な数で見てみよう。$a=3$、$b=5$ のとき:
ここで覚えるべきポイントは次の2つだけである。
- $x$ の係数は「$a$ と $b$ を足す」
- 定数項は「$a$ と $b$ を掛ける」
係数とは、文字の前についている数のことである。例えば $8x$ の係数は $8$ である。
公式を図で理解する
なぜ「足す」と「掛ける」が出てくるのか。これを面積図で理解しよう。
$(x+a)(x+b)$ は、「縦が $x+a$」「横が $x+b$」の長方形の面積と考えることができる。この長方形を4つの部分に分けると、公式の意味が見えてくる。
面積図から、次のことがわかる。
- $x^2$ が1つ
- $ax$ と $bx$ を合わせると $(a+b)x$
- $ab$ が1つ
だから、$(x+a)(x+b) = x^2 + (a+b)x + ab$ となるのである。
公式を使わずに展開する方法(分配法則)
公式を忘れてしまっても大丈夫。分配法則を使えば、必ず展開できる。
分配法則とは、$A(B+C) = AB + AC$ のように、カッコの外の数をカッコの中の各項に掛けるルールである。
展開の手順
$(x+a)(x+b)$ の展開は、次の3ステップで行う。
$x^2$ を書く
展開結果の最初は必ず $x^2$ である。
$a$ と $b$ を足して、$x$ の係数にする
$(a+b)x$ を書く。
$a$ と $b$ を掛けて、定数項にする
$ab$ を書く。
例題で確認しよう
例題1:$(x+2)(x+7)$ を展開せよ。
$a=2$、$b=7$ として公式を使う。
確認:$2+7=9$($x$ の係数)、$2 \times 7=14$(定数項)
例題2:$(x-3)(x+5)$ を展開せよ。
$a=-3$、$b=5$ として公式を使う。マイナスの符号に注意しよう。
確認:$-3+5=2$($x$ の係数)、$(-3) \times 5=-15$(定数項)
例題3:$(x-4)(x-6)$ を展開せよ。
$a=-4$、$b=-6$ として公式を使う。両方マイナスの場合である。
確認:$-4+(-6)=-10$($x$ の係数)、$(-4) \times (-6)=24$(定数項・マイナス同士の掛け算はプラス)
符号のパターンを整理しよう
符号の組み合わせによって結果が変わる。パターンを表で整理しておこう。
| 形 | $x$ の係数 | 定数項 | 例 |
|---|---|---|---|
| $(x+a)(x+b)$ | $+$(プラス) | $+$(プラス) | $(x+2)(x+3)=x^2+5x+6$ |
| $(x-a)(x-b)$ | $-$(マイナス) | $+$(プラス) | $(x-2)(x-3)=x^2-5x+6$ |
| $(x+a)(x-b)$ ($a>b$) |
$+$(プラス) | $-$(マイナス) | $(x+5)(x-2)=x^2+3x-10$ |
| $(x+a)(x-b)$ ($a | $-$(マイナス) | $-$(マイナス) | $(x+2)(x-5)=x^2-3x-10$ |
定数項の符号は「同符号ならプラス、異符号ならマイナス」と覚えよう。
よくある間違いと対策
「足す」と「掛ける」を逆にしてしまう
$(x+2)(x+3)$ を $x^2 + 6x + 5$ としてしまう。
→ 対策:「係数は和(足し算)、定数項は積(掛け算)」と声に出して覚える。「わ・せき」の順で「和・積」。
符号を間違える
$(x-3)(x+5)$ を $x^2 + 2x + 15$ としてしまう。
→ 対策:$a=-3$ と考えて、$(-3) \times 5 = -15$ と丁寧に計算する。符号は最後に確認。
$x^2$ の係数を間違える
$(x+2)(x+3)$ を $2x^2 + 5x + 6$ としてしまう。
→ 対策:この公式では $x^2$ の係数は必ず $1$ である。$2x^2$ になるのは $(2x+a)(x+b)$ のような形のとき。
この単元のよくある質問
Q. 公式を覚えられないのですが、どうすればいいですか?
A. 面積図をイメージして、分配法則で1つずつ掛けていけば必ず導けます。最初は公式に頼らず、分配法則で何度も練習するうちに自然と覚えられます。
Q. $(x+a)(x+b)$ と $(a+x)(b+x)$ は同じ結果になりますか?
A. はい、同じ結果になります。足し算の順番を入れ替えても答えは変わりません(交換法則)。どちらも $x^2 + (a+b)x + ab$ になります。
Q. $(2x+3)(x+4)$ のような形も同じ公式で解けますか?
A. この公式はそのままでは使えません。$x$ の前に係数がある場合は、分配法則で1つずつ掛けて展開します。$(2x+3)(x+4) = 2x^2 + 8x + 3x + 12 = 2x^2 + 11x + 12$ となります。
練習問題
まとめ
この記事では、$(x+a)(x+b)$ の展開公式について学んだ。ポイントは以下の通りである。
- 公式:$(x+a)(x+b) = x^2 + (a+b)x + ab$
- $x$ の係数は「足す」、定数項は「掛ける」
- 符号に注意して、$a$ や $b$ がマイナスのときは丁寧に計算する
- 公式を忘れても、分配法則で展開できる
この公式をマスターすれば、因数分解(逆の操作)もスムーズに学べるようになる。まずはこの展開を何度も練習して、手が自然に動くようにしよう。
Core-dorill— 基礎を、何度でも。

コメント