「展開」と聞いて、カッコを外す計算だとはわかっているのに、いざ式が長くなると手が止まってしまう——そんな経験はないだろうか。
特に、$(x + 2)(x + 3)$ のような多項式どうしの乗法になると、「どこから手をつければいいのか」「掛け忘れがないか不安」という声をよく聞く。
実は、展開でつまずく人のほとんどは「分配法則を2回使う」という基本手順を曖昧にしたまま進んでしまっているだけである。この記事では、その手順を1ステップずつ図解し、迷わず手が動く状態を目指す。
そもそも「展開」とは?
展開とは、カッコのついた式のカッコを外して、単項式の和の形に書き直すことである。
単項式とは、$3x$ や $-5y^2$ のように、数と文字の積だけでできた式のことである。$2x + 3$ のように足し算・引き算が入った式は多項式と呼ぶ。
例えば、$3(x + 2)$ を展開すると $3x + 6$ になる。これは分配法則を使って、カッコの中の各項に $3$ を掛けた結果である。
では、$(x + 2)(x + 3)$ のように、カッコが2つある場合はどうするか。ここがこの記事のメインテーマである。
多項式どうしの乗法を図で理解する
$(x + 2)(x + 3)$ の展開を、面積図で考えてみよう。縦が $(x + 2)$、横が $(x + 3)$ の長方形の面積を求めるイメージである。
アニメーションを再生すると、4つの部分面積が順番に現れる。それぞれが展開で出てくる4つの項に対応している。
項とは、多項式を構成する一つひとつの部分のこと。$x^2 + 5x + 6$ は3つの項($x^2$、$5x$、$6$)からなる多項式である。
展開の手順(分配法則を2回使う)
面積図のイメージを数式で表すと、次のような手順になる。ポイントは「分配法則を2回使う」ことである。
前のカッコの各項を、後ろのカッコ全体に掛ける
まず $(x + 2)$ を $x$ と $2$ に分けて、それぞれに $(x + 3)$ を掛ける。
それぞれの掛け算を分配法則で展開する
$x \cdot (x + 3) = x^2 + 3x$、$2 \cdot (x + 3) = 2x + 6$ である。
同類項をまとめる
同類項とは、文字の部分が同じ項のこと。$3x$ と $2x$ は両方とも「$x$ の1乗」なので同類項である。
「掛け忘れ」を防ぐ図解
展開で最もよくあるミスは、「一部の掛け算を忘れる」ことである。$(x + 2)(x + 3)$ では、全部で4回の掛け算が必要になる。
矢印の図で確認しよう。
- 青の矢印:$x \times x = x^2$
- 赤の矢印:$x \times 3 = 3x$
- 緑の矢印:$2 \times x = 2x$
- 紫の矢印:$2 \times 3 = 6$
前のカッコの各項から、後ろのカッコの各項へ、全ての組み合わせで矢印を引く。これで「掛け忘れ」を防げる。
例題で手順を確認する
もう1問、別の例で手順を追ってみよう。
$(x – 3)(x + 5)$ を展開せよ。
引き算が入っている場合も、考え方は同じである。$-3$ を1つの項として扱う。
符号に注意しよう。$(-3) \times 5 = -15$ である。
よくある間違いと対策
掛け算の数が足りない
❌ $(x + 2)(x + 3) = x^2 + 6$(途中の $3x$ と $2x$ が抜けている)
✅ 対策:矢印を4本引いて、4つの項を出す
同類項のまとめ忘れ
❌ $(x + 2)(x + 3) = x^2 + 3x + 2x + 6$(これで終わりにしてしまう)
✅ 対策:展開後、必ず「まとめられる項はないか」を確認する
符号のミス
❌ $(x – 3)(x + 5) = x^2 + 2x + 15$(最後の項の符号が間違い)
✅ 対策:負の数を掛けるときは、符号を丁寧に確認する。$(-3) \times 5 = -15$
この単元のよくある質問
Q. なぜ4回も掛け算をするのですか?
A. 分配法則を2回使うためである。前のカッコに2つの項、後ろのカッコに2つの項があるので、全ての組み合わせ(2×2=4通り)を掛け合わせる必要がある。面積図で考えると、長方形を4つに分けているイメージになる。
Q. 同類項はどうやって見分けるのですか?
A. 文字の部分が完全に同じ項が同類項である。例えば $3x$ と $2x$ は両方「$x$ の1乗」なので同類項。$x^2$ と $x$ は「$x$ の2乗」と「$x$ の1乗」で異なるので同類項ではない。数だけの項(定数項)どうしも同類項である。
Q. カッコの中が3つ以上の項でも同じ方法でできますか?
A. できる。例えば $(x + 2)(x + y + 3)$ の場合、前のカッコの2つの項を、後ろのカッコの3つの項それぞれに掛ける(2×3=6回の掛け算)。手順は同じで、全ての組み合わせを漏れなく掛けることがポイントである。
練習問題
まとめ
この記事では、多項式どうしの乗法(展開)について学んだ。ポイントは以下の通りである。
- 展開とは、カッコを外して単項式の和に直すこと
- $(a + b)(c + d)$ の形では、分配法則を2回使って4つの項を作る
- 全ての組み合わせを掛け合わせ、最後に同類項をまとめる
- 面積図や矢印の図を使うと、掛け忘れを防げる
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