「少なくとも1回は当たる確率を求めよ」——この問題文を見た瞬間、手が止まってしまう人は多い。
「少なくとも」という言葉が出てきただけで、何を計算すればいいのかわからなくなる。場合分けが複雑になりそうで、どこから手をつければいいか見当もつかない。そんな経験はないだろうか。
実は、「少なくとも」の確率は、直接求めようとすると難しいが、余事象を使えば驚くほど簡単に計算できる。この記事では、余事象の考え方から具体的な計算手順まで、順を追って解説する。
そもそも「余事象」とは?
まず、余事象という言葉の意味を確認しよう。
余事象とは、「ある事象が起こらない」という事象のことである。事象Aに対して、Aが起こらない事象を「Aの余事象」と呼び、$\overline{A}$ と書く。
具体例で考えてみよう。サイコロを1回振るとき、
- 事象A「3以下の目が出る」の余事象 → 「4以上の目が出る」
- 事象B「偶数の目が出る」の余事象 → 「奇数の目が出る」
- 事象C「1が出る」の余事象 → 「1以外の目が出る」
ここで重要な性質がある。
なぜなら、「Aが起こる」か「Aが起こらない」かのどちらかは必ず起こるからである。この性質を式に直すと、
これを変形すると、次の公式が得られる。
$P(A)$ は「事象Aが起こる確率」を表す記号である。Probability(確率)の頭文字Pを使っている。
なぜ「少なくとも」で余事象を使うのか
「少なくとも1回」「少なくとも1人」という表現が出てきたら、余事象を使うことを考えよう。その理由を、具体例で見てみる。
例:コインを3回投げて、少なくとも1回は表が出る確率
「少なくとも1回は表」を直接数えようとすると、次の場合をすべて考える必要がある。
- 表が1回出る場合(表裏裏、裏表裏、裏裏表)→ 3通り
- 表が2回出る場合(表表裏、表裏表、裏表表)→ 3通り
- 表が3回出る場合(表表表)→ 1通り
合計7通りを数え上げなければならない。
一方、余事象「1回も表が出ない」を考えると、
- 裏裏裏 → 1通りだけ
圧倒的に簡単である。このように、「少なくとも○○」の余事象は「1回も○○でない」となり、場合の数が少なくて済むのである。
「少なくとも」の確率を求める手順
「少なくとも」の確率は、次の3ステップで求める。
余事象を特定する
「少なくとも1回○○」の余事象は「1回も○○でない」である。
余事象の確率を求める
「1回も○○でない」確率を計算する。これは通常、場合の数が少なく計算しやすい。
1から余事象の確率を引く
$(\text{少なくとも1回○○の確率}) = 1 – (\text{1回も○○でない確率})$
例題で手順を確認しよう
例題1:コインを3回投げる
問題:コインを3回投げるとき、少なくとも1回は表が出る確率を求めよ。
余事象を特定する
「少なくとも1回は表」の余事象は「1回も表が出ない」、つまり「3回とも裏」である。
余事象の確率を求める
1回の試行で裏が出る確率は $\dfrac{1}{2}$ である。
3回とも裏が出る確率は、
1から余事象の確率を引く
答え:$\dfrac{7}{8}$
例題2:サイコロを2回振る
問題:サイコロを2回振るとき、少なくとも1回は6の目が出る確率を求めよ。
余事象を特定する
「少なくとも1回は6」の余事象は「1回も6が出ない」、つまり「2回とも6以外」である。
余事象の確率を求める
1回の試行で6以外が出る確率は $\dfrac{5}{6}$ である。
2回とも6以外が出る確率は、
1から余事象の確率を引く
答え:$\dfrac{11}{36}$
計算の流れを図で理解する
よくある間違いと対策
「少なくとも1回」を「ちょうど1回」と混同する
「少なくとも1回」は「1回以上」という意味である。1回でも、2回でも、3回でも条件を満たす。「ちょうど1回」は「1回だけ」という意味なので、まったく違う。
【対策】「少なくとも」が出たら、「○回以上すべて」と読み替える習慣をつけよう。
余事象の確率をそのまま答えにしてしまう
「1回も○○でない」確率を計算しただけで満足してしまい、1から引くのを忘れるミスが多い。
【対策】最後に「1から引く」ことを、手順の最終ステップとして必ず確認しよう。
確率の掛け算で分母を間違える
例えば、$\dfrac{5}{6} \times \dfrac{5}{6}$ を計算するとき、分母を $6 \times 6 = 36$ とすべきところを $6 + 6 = 12$ としてしまうミスがある。
【対策】確率の掛け算は「分母どうし、分子どうしを掛ける」ことを確認しよう。
この単元のよくある質問
Q. 「少なくとも」以外でも余事象は使えますか?
A. 使える。「○○でない確率」を直接求めるのが難しいとき、「○○である確率」を求めて1から引く方法は有効である。ただし、「少なくとも」の問題では特に余事象が威力を発揮する。
Q. なぜ「1から引く」と求められるのですか?
A. すべての場合の確率を合計すると1になるからである。「Aが起こる」か「Aが起こらない」かは必ずどちらかなので、$P(A) + P(\overline{A}) = 1$ が成り立つ。
Q. 「少なくとも2回」の場合はどうすればいいですか?
A. 「少なくとも2回」の余事象は「1回以下」、つまり「0回または1回」である。余事象の場合の数が増えるが、考え方は同じである。「0回の確率」と「ちょうど1回の確率」を足して、1から引けばよい。
練習問題
まとめ
この記事では、「少なくとも」の確率の求め方について学んだ。ポイントは以下の通りである。
- 余事象とは、「ある事象が起こらない」という事象のこと
- 「少なくとも1回○○」の余事象は「1回も○○でない」
- (少なくともの確率)$= 1 -$(余事象の確率)
- 余事象を使うと、場合の数が少なくなり計算が楽になる
「少なくとも」という言葉が出てきたら、すぐに余事象を思い浮かべる癖をつけよう。練習を重ねれば、自然と手が動くようになる。
Core-dorill— 基礎を、何度でも。

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