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【資料の分析】標本調査の活用|母集団の推定【中3数学】【必須】

アンケートや調査で「全国の中学生1000人に聞きました」という結果を見たことがあるだろうか。日本には約300万人の中学生がいるのに、なぜたった1000人の回答で「全体の傾向」がわかるのだろう。

「一部を調べただけで全体がわかるなんて、本当に信用できるの?」「どうやって計算すればいいのかわからない」そんな疑問を持つのは当然である。

実は、標本調査ひょうほんちょうさには「一部から全体を推定すいていする」ための明確な計算方法がある。この記事では、標本調査の結果から母集団ぼしゅうだんの数量を推定する手順を、具体例とともに順を追って解説する。

対象:中学3年 所要時間:約12分
目次

そもそも「母集団の推定」とは?

標本調査では、調べたい集団全体のことを母集団ぼしゅうだん、その中から選び出した一部を標本ひょうほんと呼ぶ。

母集団ぼしゅうだんとは、調査の対象となる集団全体のことである。例えば「ある中学校の全生徒」「池にいる魚の全数」などが母集団にあたる。

標本ひょうほんとは、母集団から無作為むさくいに(偏りなくランダムに)選び出した一部のことである。

母集団の推定とは、標本で得られた割合や平均を、母集団全体にも当てはまると考えて、全体の数量を計算することである。

具体的には、次のような場面で使う。

  • 池の魚を100匹捕まえたら、そのうち15匹に印がついていた。印をつけた魚は全部で50匹。では池全体には何匹いる?
  • 工場で作った製品から200個を抜き取って検査したら、不良品が6個あった。製品全体が10000個なら、不良品は何個くらいある?

推定の基本公式

母集団の推定には、次の考え方が基本となる。

$$\text{標本での割合} = \text{母集団での割合}$$

言い換えると、標本で見つかった「特定の条件を満たすものの割合」は、母集団全体でもほぼ同じであると考える。

この考え方を式にすると、次のようになる。

$$\frac{\text{標本で条件を満たす数}}{\text{標本の大きさ}} = \frac{\text{母集団で条件を満たす数}}{\text{母集団の大きさ}}$$

これを比例式ひれいしきとして解くことで、知りたい数量を求められる。

推定のしくみを図で理解する

標本と母集団の関係を視覚的に確認しよう。下のアニメーションでは、母集団から標本を抽出し、その割合で全体を推定する流れを示している。

図のポイントは次の通りである。

  • 母集団全体を調べることはできないので、一部(標本)だけを調べる
  • 標本での赤い点の割合(20%)を計算する
  • この割合が母集団全体でも同じだと考えて、全体の数を推定する

推定の手順

母集団の数量を推定する手順を、具体的に見ていこう。

1

問題文から情報を整理する

標本の大きさ(何個調べたか)と、条件を満たした数を確認する。また、母集団の大きさ(全体の数)も確認する。

2

標本での割合を求める

標本で条件を満たす数 ÷ 標本の大きさ を計算する。分数のままでも、小数に直してもよい。

3

比例式を立てて、母集団の数量を求める

「標本での割合 = 母集団での割合」という関係を使って、求めたい数を $x$ とおき、方程式を解く。

例題1:不良品の数を推定する

次の問題を解いてみよう。

例題1. ある工場で作られた製品8000個の中から、200個を無作為むさくいに抽出して検査したところ、不良品が6個見つかった。この工場で作られた製品8000個の中には、不良品がおよそ何個あると推定できるか。

解き方

1

情報を整理する

  • 母集団の大きさ:8000個(製品全体)
  • 標本の大きさ:200個(検査した数)
  • 標本で見つかった不良品:6個
  • 求めたいもの:母集団全体の不良品の数
2

標本での不良品の割合を求める

$$\text{標本での割合} = \frac{6}{200} = \frac{3}{100}$$

200個中6個なので、割合は $\dfrac{6}{200}$ である。約分すると $\dfrac{3}{100}$ となる。

3

比例式を立てて解く

母集団全体の不良品の数を $x$ 個とすると、「標本での割合 = 母集団での割合」より、

$$\frac{6}{200} = \frac{x}{8000}$$

この比例式を解く。内項の積 = 外項の積 を使うと、

$$\begin{aligned} 200 \times x &= 6 \times 8000 \\[8pt] 200x &= 48000 \\[8pt] x &= \frac{48000}{200} \\[8pt] x &= 240 \end{aligned}$$

答え:およそ240個

「およそ」と書くのは、推定値は正確な数ではなく、標本から予測した概算がいさんだからである。

例題2:捕獲再捕獲法(標識調査)

野生動物の数を推定するときによく使われる方法を見てみよう。

例題2. ある池で魚を捕まえ、50匹に印をつけて池に戻した。数日後、同じ池で魚を80匹捕まえたところ、そのうち4匹に印がついていた。この池には、魚がおよそ何匹いると推定できるか。

解き方

この問題は「捕獲再捕獲法ほかくさいほかくほう」と呼ばれる方法である。考え方は同じで、「標本での割合 = 母集団での割合」を使う。

1

情報を整理する

  • 印をつけた魚の数:50匹(これが「母集団で条件を満たす数」にあたる)
  • 2回目に捕まえた魚の数:80匹(標本の大きさ)
  • 2回目に捕まえた魚のうち、印がついていた数:4匹(標本で条件を満たす数)
  • 求めたいもの:池全体の魚の数(母集団の大きさ)
2

比例式を立てる

池全体の魚の数を $x$ 匹とすると、

$$\frac{\text{標本で印がついていた数}}{\text{標本の大きさ}} = \frac{\text{印をつけた魚の総数}}{\text{池全体の魚の数}}$$

数値を代入すると、

$$\frac{4}{80} = \frac{50}{x}$$
3

比例式を解く

$$\begin{aligned} 4 \times x &= 80 \times 50 \\[8pt] 4x &= 4000 \\[8pt] x &= \frac{4000}{4} \\[8pt] x &= 1000 \end{aligned}$$

答え:およそ1000匹

捕獲再捕獲法のしくみを図で理解する

この方法がなぜ成り立つのか、アニメーションで確認しよう。

捕獲再捕獲法のポイントは次の通りである。

  • 印をつけた魚が池全体に均等に散らばることを前提としている
  • 2回目に捕まえた魚での「印つきの割合」は、池全体での「印つきの割合」と等しいと考える
  • 印をつけた魚の数(50匹)がわかっているので、割合から逆算して全体の数を求められる

よくある間違いと対策

標本調査の推定問題では、次のような間違いが起きやすい。

1

比例式の分数を逆にしてしまう

「標本で条件を満たす数 / 標本の大きさ」と「母集団で条件を満たす数 / 母集団の大きさ」の対応を間違えないこと。分子どうし、分母どうしが同じ種類の数になっているか確認しよう。

2

捕獲再捕獲法で、どの数がどこに入るか混乱する

「印をつけた魚の数」は母集団側に入る。「2回目に捕まえた数」が標本の大きさ、「そのうち印がついていた数」が標本で条件を満たす数である。

3

「およそ」を書き忘れる

推定値は標本から予測した値なので、正確な数ではない。答えには「およそ」や「約」をつけること。

この単元のよくある質問

Q. 標本を大きくすれば推定は正確になるの?

A. 一般的に、標本を大きくするほど推定の精度は高くなる。ただし、標本の取り方が偏っていると(無作為でないと)、いくら数を増やしても正確にはならない。無作為抽出が大前提である。

Q. 捕獲再捕獲法は実際にどんな場面で使われているの?

A. 野生動物の生息数調査でよく使われている。例えば、クマやシカの頭数調査、絶滅危惧種の個体数推定、魚の資源量調査などで実際に活用されている方法である。

Q. 推定した値と実際の値はどれくらいずれる可能性があるの?

A. 標本の大きさや、母集団の性質によって異なる。中学数学では「ずれの範囲」までは扱わないが、高校以降で「信頼区間」という概念を学ぶ。今は「推定値は目安であり、正確な値ではない」と理解しておけばよい。

練習問題

問1. ある工場で生産された製品5000個の中から、250個を無作為に抽出して検査したところ、不良品が10個見つかった。この工場で生産された製品5000個の中には、不良品がおよそ何個あると推定できるか。
問2. ある湖で魚を捕まえ、80匹に印をつけて湖に戻した。1週間後、同じ湖で魚を100匹捕まえたところ、そのうち5匹に印がついていた。この湖には、魚がおよそ何匹いると推定できるか。
問3. ある中学校の全校生徒600人の中から、50人を無作為に抽出してアンケートを行ったところ、「数学が好き」と答えた生徒が18人いた。全校生徒の中で「数学が好き」と答える生徒は、およそ何人と推定できるか。

まとめ

この記事では、標本調査の結果から母集団の数量を推定する方法を学んだ。ポイントは以下の通りである。

  • 「標本での割合 = 母集団での割合」という関係を使う
  • 比例式を立てて、求めたい数を $x$ として解く
  • 捕獲再捕獲法では、印をつけた数が「母集団で条件を満たす数」にあたる
  • 推定値は正確な数ではないため、答えには「およそ」をつける

標本調査は、全数調査ができない場面で非常に役立つ方法である。手順を覚えて、確実に解けるようになろう。

Core-dorill— 基礎を、何度でも。

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