「全数調査と標本調査の違い」と聞いて、どちらも同じような調査に思えていないだろうか。
テストで「この調査は全数調査か標本調査か」と問われたとき、なんとなくで答えて間違えた経験はないだろうか。「全部調べるか、一部を調べるか」という説明は聞いたことがあっても、具体的にどんな場面でどちらを使うのか、イメージがわかない人も多い。
実は、2つの調査方法の使い分けには明確な基準がある。この記事では、全数調査と標本調査の違いを具体例とともに整理し、問題を見た瞬間に判断できるようになるまで解説する。
そもそも「調査」とは何か
数学における調査とは、ある集団の特徴を知るために、データを集めることである。
ここでいう「集団」とは、調べたい対象全体のことである。例えば「日本の中学3年生全員」「ある工場で作られた製品すべて」などが集団にあたる。
調査には大きく分けて2つの方法がある。
- 全数調査:集団のすべてを調べる方法
- 標本調査:集団の一部だけを調べて、全体を推測する方法
それぞれの特徴を、具体例とともに見ていこう。
全数調査とは
全数調査とは、調べたい集団のすべてを調査する方法である。別名「悉皆調査」ともいう。
全数調査の具体例
- 国勢調査:日本に住むすべての人を対象に、5年ごとに行われる
- 定期テスト:クラス全員の点数を集計する
- 出席確認:クラス全員の出欠を確認する
国勢調査は、日本で最も大規模な全数調査である。調査員が全国の世帯を訪問し、家族構成や職業などを調べる。
全数調査のメリット
- 正確なデータが得られる(推測ではなく、実際の値がわかる)
- 集団全体の特徴を完全に把握できる
全数調査のデメリット
- 時間と費用がかかる
- 集団が大きいと実施が困難
- 調査対象を破壊する場合は不可能(例:電球の寿命検査)
標本調査とは
標本調査とは、集団の一部(標本)を取り出して調べ、その結果から集団全体の特徴を推測する方法である。
「標本」とは、全体(母集団)から取り出した一部分のことである。「サンプル」ともいう。
標本調査の具体例
- 視聴率調査:全世帯ではなく、選ばれた世帯のテレビ視聴状況を調べる
- 世論調査:数千人に聞いて、国民全体の意見を推測する
- 品質検査:工場で作った製品の一部を検査して、全体の品質を推測する
- 味見:鍋の料理を一口だけ味見して、全体の味を確認する
標本調査のメリット
- 時間と費用を節約できる
- 大きな集団でも調査可能
- 調査対象を破壊しても、全体への影響が少ない
標本調査のデメリット
- あくまで推測なので、誤差が生じる
- 標本の選び方が偏ると、結果も偏る
2つの調査方法を図で理解する
アニメーションを見てわかるように、全数調査は集団のすべて(青いドット全部)を調べるのに対し、標本調査は一部(赤いドット)だけを取り出して調べる。
どちらの調査を使うべきか?判断基準
問題文を読んで、どちらの調査方法が適切か判断するには、以下の3つの基準で考えるとよい。
集団の大きさ:集団が大きすぎて全部調べられない → 標本調査
調査対象の破壊:調査すると対象が壊れる・なくなる → 標本調査
正確さの必要性:絶対に正確な値が必要 → 全数調査
具体例で判断してみよう
| 調査の内容 | 適切な方法 | 理由 |
|---|---|---|
| 電球の寿命を調べる | 標本調査 | 調べると電球が切れる(破壊) |
| 缶詰の中身を調べる | 標本調査 | 開けると商品にならない(破壊) |
| 日本の人口を調べる | 全数調査 | 正確な値が必要(国勢調査) |
| クラス全員のテスト結果 | 全数調査 | 人数が少なく、全員調べられる |
| 川の水質を調べる | 標本調査 | 川の水すべては調べられない |
| 視聴率を調べる | 標本調査 | 全世帯は多すぎる |
標本調査で大切な「無作為抽出」
標本調査で正確な結果を得るには、標本の選び方が重要である。
無作為抽出とは、母集団からでたらめに(偏りなく)標本を選ぶことである。
「無作為」とは「意図的に選ばない」という意味である。くじ引きのように、どれが選ばれるかわからない状態で選ぶ。
なぜ無作為抽出が必要なのか
例えば、「中学生の平均睡眠時間」を調べたいとき、次の2つの選び方を比べてみよう。
- 悪い例:部活の朝練に来ている生徒だけに聞く → 早起きの生徒に偏る
- 良い例:学校全体から抽選で選んだ生徒に聞く → 偏りが少ない
偏った標本から推測すると、母集団の実際の値とかけ離れた結果になってしまう。
よくある間違いと対策
「全部調べる」の意味を取り違える
間違い:「工場の製品を全部検査する」を全数調査だと思う
対策:「全部検査したら売る製品がなくなる」と考える。製品検査は通常、標本調査である。
国勢調査を標本調査だと思う
間違い:「日本全体は大きいから標本調査だろう」と考える
対策:国勢調査は名前の通り「国のすべてを調べる」全数調査である。大変だが、5年に1度、全世帯を調べている。
視聴率を全数調査だと思う
間違い:「正確な数字が出ているから全部調べている」と考える
対策:視聴率は数千世帯の標本から推測している。だから「推定視聴率」という言い方もある。
この単元のよくある質問
Q. なぜ標本調査でも正確な推測ができるのですか?
A. 無作為抽出で偏りなく標本を選べば、標本の特徴は母集団の特徴をよく反映するからである。標本の数が多いほど、推測の精度は上がる。これを「大数の法則」という。
Q. 標本調査の誤差はどれくらいですか?
A. 誤差の大きさは標本の数によって変わる。例えば、世論調査で1000人に聞いた場合、誤差は約3%程度である。「支持率45%」と出たら、実際は42〜48%の範囲にあると考える。
Q. 全数調査と標本調査、どちらが正しい方法ですか?
A. どちらが正しいということはなく、状況に応じて使い分ける。正確さが最優先なら全数調査、効率を重視するなら標本調査を選ぶ。テストでは「この場面ではどちらが適切か」を判断する力が問われる。
練習問題
(1)ある工場で生産した蛍光灯の寿命を調べる
(2)あるクラス40人の身長の平均を調べる
(3)ある湖の水質を調べる
ア:調べやすい人から順に選ぶ
イ:くじ引きで選ぶ
ウ:自分の友達を選ぶ
エ:乱数表を使って選ぶ
「調べたい集団全体のことを( ① )といい、そこから取り出した一部分のことを( ② )という。」
まとめ
この記事では、全数調査と標本調査の違いについて学んだ。ポイントは以下の通りである。
- 全数調査:集団のすべてを調べる方法。正確だが、時間と費用がかかる
- 標本調査:集団の一部(標本)を調べて全体を推測する方法。効率的だが、誤差がある
- 使い分けの基準:集団の大きさ、調査対象の破壊、正確さの必要性で判断する
- 無作為抽出:標本調査では、偏りなくランダムに標本を選ぶことが重要
問題文を読んで「全部調べられるか?」「調べると壊れるか?」と考えれば、どちらの調査方法が適切か判断できるようになる。
Core-dorill— 基礎を、何度でも。

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