「三平方の定理は使えるけど、立体になると途端にわからなくなる」——そう感じたことはないだろうか。
直方体の対角線や、円錐の母線の長さを求める問題で手が止まってしまう。図が複雑に見えて、どこに三平方の定理を使えばいいのかわからない。
実は、空間図形の問題も「平面を切り出す」というたった一つのコツがわかれば、今まで通りの三平方の定理で解ける。この記事では、立体図形への三平方の定理の応用方法を、ステップごとに図解で解説する。
そもそも空間図形への応用とは?
三平方の定理は、直角三角形の3辺の関係を表す公式である。
三平方の定理とは、直角三角形において「直角をはさむ2辺の2乗の和」が「斜辺の2乗」に等しいという関係である。
この定理は平面上の直角三角形だけでなく、立体の中に隠れている直角三角形にも使える。
空間図形の問題で求めるものは、主に次の3つである。
- 直方体の対角線:箱の中を斜めに貫く線の長さ
- 円錐・角錐の高さ:底面から頂点までの垂直距離
- 円錐の母線:底円の周上の点から頂点までの長さ
これらはすべて、「立体の中から直角三角形を見つけ出す」ことで解ける。
空間図形の攻略法:平面を切り出す
立体を見て混乱するのは、3次元のまま考えようとするからである。
解決策はシンプル:立体を切って、断面を取り出す。
断面は2次元の平面図形になる。その中に直角三角形があれば、三平方の定理が使える。
上の図では、直方体の対角線を含む断面を取り出している。断面は長方形になり、その対角線が直方体の対角線である。長方形の対角線を求めるには、三平方の定理を使えばよい。
パターン①:直方体の対角線
直方体の対角線とは、向かい合う頂点を結ぶ線分のことである。
対角線とは、多角形や立体において、隣り合わない頂点どうしを結ぶ線分のことである。
縦 $a$、横 $b$、高さ $c$ の直方体の対角線の長さを $l$ とすると、次の公式が成り立つ。
この公式がなぜ成り立つのか、図で確認しよう。
直方体の対角線:考え方
底面の対角線を求める
底面は長方形である。縦 $a$、横 $b$ の長方形の対角線 $d$ は、三平方の定理より
立体の対角線を求める
底面の対角線 $d$ と高さ $c$ を2辺とする直角三角形ができる。この斜辺が立体の対角線 $l$ である。
2つの式を合わせる
$d^2 = a^2 + b^2$ を代入すると
したがって
例題:直方体の対角線
問題:縦3cm、横4cm、高さ5cmの直方体の対角線の長さを求めよ。
答えを簡単にするため、$\sqrt{50}$ を $5\sqrt{2}$ に変形した。$50 = 25 \times 2$ と分解し、$\sqrt{25} = 5$ を外に出す。
パターン②:円錐の母線・高さ・底面の半径
円錐は、「母線」「高さ」「底面の半径」の3つの長さが直角三角形を作る。
母線とは、円錐の頂点から底面の円周上の点までを結ぶ線分のことである。円錐の側面を作る線と考えるとよい。
円錐の公式は次の通りである。
- $l$:母線の長さ
- $h$:高さ
- $r$:底面の半径
3つのうち2つがわかれば、残りの1つが求まる。
例題:円錐の高さを求める
問題:母線の長さが10cm、底面の半径が6cmの円錐の高さを求めよ。
$h^2 = 64$ より $h = \pm 8$ だが、長さは正なので $h = 8$ となる。
パターン③:角錐の高さ
角錐でも、頂点から底面に垂線を下ろすと直角三角形ができる。
正四角錐(底面が正方形、頂点が底面の真上にある角錐)を例に考えよう。
角錐の高さを求める手順
どこに直角三角形があるか確認する
頂点Oから底面に垂線OHを下ろす。Hは底面の中心(正四角錐の場合、対角線の交点)である。
直角三角形の3辺を特定する
- OH:角錐の高さ(求めるもの)
- HM:底面の中心から辺の中点までの長さ
- OM:頂点から辺の中点までの長さ(問題で与えられることが多い)
三平方の定理を適用する
例題:正四角錐の高さ
問題:底面の1辺が6cm、側面の二等辺三角形の等辺が5cmの正四角錐の高さを求めよ。
考え方:底面の中心Hから辺ABの中点Mまでの距離は、1辺の半分で $3$ cm。頂点Oから中点Mまでの距離は $5$ cm(側面の二等辺三角形の高さではなく、斜辺)。
答え:4 cm
よくある間違いと対策
直方体で「底面の対角線」を忘れる
直方体の対角線は、2段階で求める。底面の対角線 → 立体の対角線。いきなり $l^2 = a^2 + b^2 + c^2$ を使うと、途中経過がわからなくなる。
対策:底面に補助線を引いて、2つの直角三角形を意識する。
円錐で「母線」と「高さ」を混同する
母線は斜めの線、高さは垂直な線である。図を描いて確認すること。
対策:円錐を縦に切った断面を描き、直角三角形の辺にラベルを付ける。
角錐の「底面の中心」がどこかわからない
正四角錐なら対角線の交点、正三角錐なら重心である。
対策:「正」がつく角錐は、底面の中心の真上に頂点がある。底面の図形ごとに中心の位置を覚えておく。
この単元のよくある質問
Q. なぜ空間図形で三平方の定理が使えるのですか?
A. 三平方の定理は「直角三角形の3辺の関係」を表す公式である。空間図形の中にも直角三角形は存在する。立体を適切な平面で切ると、断面に直角三角形が現れるため、三平方の定理が適用できる。
Q. 直方体の対角線の公式 $l = \sqrt{a^2 + b^2 + c^2}$ を丸暗記してもいいですか?
A. 公式として覚えてもよいが、導出過程を理解しておくことを勧める。「底面の対角線 → 立体の対角線」の2段階で考えれば、どの立体でも応用が利く。暗記に頼ると、少し形が変わった問題で対応できなくなる。
Q. 円錐の母線の長さを求める問題と、高さを求める問題の違いは何ですか?
A. どちらも同じ直角三角形(母線・高さ・半径)を使う。違いは「どの辺が未知数か」だけである。$l^2 = h^2 + r^2$ の式を使い、わかっている2辺から残りの1辺を求める。問題文をよく読んで、何が与えられていて何を求めるのか確認すること。
練習問題
まとめ
この記事では、三平方の定理を空間図形に応用する方法を学んだ。ポイントは以下の通りである。
- 空間図形は「平面を切り出す」ことで、直角三角形を見つける
- 直方体の対角線は $l = \sqrt{a^2 + b^2 + c^2}$(2段階で導出)
- 円錐・角錐は、頂点から底面に垂線を下ろして直角三角形を作る
- 問題で与えられた情報から、直角三角形の3辺のうち2辺を特定し、残り1辺を求める
Core-dorill— 基礎を、何度でも。

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