「三平方の定理は使えるけど、計算に時間がかかりすぎる」——そんな悩みを抱えていないだろうか。
実は、直角三角形の中には「辺の比が決まっている」特別な形がある。この比を覚えていれば、計算なしで答えが出せるのだ。
この記事では、45°-45°-90°と30°-60°-90°の2つの直角三角形について、辺の比を「なぜそうなるのか」から理解し、使いこなせるようになるまで順を追って解説する。
特別な直角三角形とは
直角三角形の中には、角度が決まると辺の比も自動的に決まるものがある。これを特別な直角三角形と呼ぶ。
覚えるべきは、次の2つだけである。
| 角度 | 辺の比 | 別名 |
|---|---|---|
| 45°-45°-90° | $1 : 1 : \sqrt{2}$ | 直角二等辺三角形 |
| 30°-60°-90° | $1 : 2 : \sqrt{3}$ | 正三角形の半分 |
辺の比とは、3辺の長さの割合のことである。例えば $1 : 1 : \sqrt{2}$ なら、2辺が同じ長さで、残り1辺がその $\sqrt{2}$ 倍という意味だ。
この比を知っていると、三平方の定理を使わずに辺の長さが求められる。テストでの計算時間を大幅に短縮できるのだ。
45°-45°-90°の三角形を理解する
まず、45°-45°-90°の直角三角形から見ていこう。これは直角二等辺三角形のことである。
なぜ $1 : 1 : \sqrt{2}$ になるのか
2つの角が45°で等しいため、それに向かい合う2辺も等しくなる。この2辺をそれぞれ $a$ とすると、三平方の定理より:
つまり、2辺が $a$ なら斜辺は $a\sqrt{2}$ となる。これを比で表すと $1 : 1 : \sqrt{2}$ である。
アニメーションでは、まず2つの角が45°であることを示し、次に等しい2辺にマークを付け、最後に辺の比 $1 : 1 : \sqrt{2}$ を表示している。
45°-45°-90°の使い方
辺の比 $1 : 1 : \sqrt{2}$ を使うと、1辺がわかれば他の辺もすぐ求まる。
等しい2辺(直角をはさむ辺)がわかっている場合
斜辺 $=$ その辺 $\times \sqrt{2}$
例:2辺が5cmなら、斜辺 $= 5\sqrt{2}$ cm
斜辺がわかっている場合
等しい2辺 $=$ 斜辺 $\div \sqrt{2} =$ 斜辺 $\times \dfrac{\sqrt{2}}{2}$
例:斜辺が $6\sqrt{2}$ cmなら、2辺 $= 6\sqrt{2} \times \dfrac{\sqrt{2}}{2} = 6$ cm
$\div \sqrt{2}$ は $\times \dfrac{\sqrt{2}}{2}$ と同じである。分母の有理化をしているだけだ。
30°-60°-90°の三角形を理解する
次に、30°-60°-90°の直角三角形を見ていこう。これは正三角形を半分に切った形である。
なぜ $1 : 2 : \sqrt{3}$ になるのか
正三角形の頂点から底辺に垂線を下ろすと、三角形がちょうど半分に分かれる。
正三角形の1辺を $2a$ とすると、半分に切った三角形では:
- 底辺(30°の向かい)= $a$(元の辺の半分)
- 斜辺(60°の向かい)= $2a$(元の辺そのまま)
- 高さ(90°の向かい)= 三平方の定理で計算
したがって、3辺は $a : 2a : a\sqrt{3}$、つまり $1 : 2 : \sqrt{3}$ となる。
比の順番に注意しよう。$1 : 2 : \sqrt{3}$ は「30°の向かい : 斜辺(最長) : 60°の向かい」の順である。$\sqrt{3} \approx 1.73$ なので、1 < $\sqrt{3}$ < 2 という大小関係になっている。
30°-60°-90°の使い方
30°の向かいの辺(最短)がわかっている場合
斜辺 $=$ その辺 $\times 2$
60°の向かい $=$ その辺 $\times \sqrt{3}$
斜辺(最長)がわかっている場合
30°の向かい $=$ 斜辺 $\div 2$
60°の向かい $=$ 斜辺 $\times \dfrac{\sqrt{3}}{2}$
60°の向かいの辺がわかっている場合
30°の向かい $=$ その辺 $\div \sqrt{3} =$ その辺 $\times \dfrac{\sqrt{3}}{3}$
斜辺 $=$ その辺 $\times \dfrac{2\sqrt{3}}{3}$
2つの比を覚えるコツ
辺の比を確実に覚えるためのポイントを紹介する。
覚え方のコツ
45°-45°-90°は「1:1から始まる」
2つの角が等しいから2辺も等しい。だから $1 : 1 : ?$ と始まる。残りは $\sqrt{2}$(三平方の定理から)。
30°-60°-90°は「1と2が入っている」
正三角形を「半分」に切るから、$1$ と $2$ が出てくる。残りは $\sqrt{3}$。
「√」は1種類だけ
どちらの三角形も、$\sqrt{}$ が付くのは1つの辺だけ。45°は $\sqrt{2}$、30°-60°は $\sqrt{3}$。
例題で確認しよう
例題1:45°-45°-90°
問題:直角二等辺三角形の斜辺が $8$ cm のとき、他の2辺の長さを求めよ。
答え:$4\sqrt{2}$ cm
例題2:30°-60°-90°
問題:30°-60°-90°の直角三角形で、30°の向かいの辺が $5$ cm のとき、他の2辺の長さを求めよ。
答え:斜辺 $10$ cm、60°の向かいの辺 $5\sqrt{3}$ cm
よくある間違いと対策
比の順番を間違える
$1 : 2 : \sqrt{3}$ の順番を「30°の向かい : 斜辺 : 60°の向かい」と覚えよう。小さい角の向かいが小さい辺である。
$\sqrt{2}$ と $\sqrt{3}$ を取り違える
45°は $\sqrt{2}$(2つの45°)、60°は $\sqrt{3}$(60÷20=3)と語呂で覚える。
どの辺がどの角の向かいかわからない
必ず図を描き、角度を書き込んでから辺の長さを考える。向かい合う辺は、その角から最も遠い辺である。
この単元のよくある質問
Q. なぜこの2つの三角形だけ「特別」なのですか?
A. 他の直角三角形でも辺の比は決まるが、この2つは比に $\sqrt{2}$ や $\sqrt{3}$ という扱いやすい値が現れるため、暗記して使う価値がある。テストや入試で頻出するのも、計算しやすいからである。
Q. 三平方の定理を使えば解けるのに、なぜ比を覚える必要があるのですか?
A. 三平方の定理を使っても解けるが、計算に時間がかかる。比を覚えていれば、見た瞬間に答えが出せる。テストでは計算ミスを減らし、時間を節約できるため、覚えておく価値は大きい。
Q. $1 : 2 : \sqrt{3}$ の「2」はなぜ斜辺なのですか?1や√3ではないのですか?
A. 斜辺は直角の向かいにある辺で、直角三角形で最も長い。$\sqrt{3} \approx 1.73$ なので、1 < $\sqrt{3}$ < 2 となり、2が最大である。よって2が斜辺に対応する。
練習問題
まとめ
この記事では、特別な直角三角形の辺の比について学んだ。ポイントは以下の通りである。
- 45°-45°-90°(直角二等辺三角形)の比は $1 : 1 : \sqrt{2}$
- 30°-60°-90°(正三角形の半分)の比は $1 : 2 : \sqrt{3}$
- 比を覚えれば、三平方の定理を使わず瞬時に辺の長さが求まる
- 「小さい角の向かいに小さい辺」の原則を忘れない
これらの比は、三角比や三角関数でも使い続ける基本である。何度も練習して、見た瞬間に使えるようにしておこう。
Core-dorill— 基礎を、何度でも。

コメント